チタンは錆びない金属

チタンとステンレスの比較

錆びるといえば、よく耳にするのがステンレスです。
そこで、チタンとステンレスを耐食性の面から比較してみましょう。

ステンレスにはいろいろな種類がありますが、かなり大雑把に言うと、鉄にクロムやニッケルを混ぜた合金のことです。 クロムなどが表面に不動態皮膜を作り、これが内部を保護して、錆びにくい金属になります。 ここまではチタンと同じですね。

ステンレスの不動態皮膜は酸で破壊されることが多いのですが、塩化物イオンでも破壊されます。 この塩化物イオンに対する耐食性が、チタンとステンレスの違いです。 厳密にはそれだけではありませんが、ここは押さえておいてください)
また、ステンレスは合金ですが、チタンは純金属、金属元素です。 ここにもチタンとステンレスの耐食性の違いの原因があります。 以下、実際の現象を見てみましょう。

まず、塩化ナトリウムの水溶液中での耐食性を比較してみましょう。 (= salt water = sea waterとしてイメージしてください。

th

濃度(%) 温度(℃) チタンの腐食率 SUS304の腐食率
10 24 0.127mm/年以下 0.127~0.508mm/年
40 24 0.127mm/年以下 0.127~0.508mm/年
10 100 0.127~0.508mm/年
10 100 0.0.127mm/年以下 0.127~0.508mm/年
ただし、局所的な腐食がある
40 100 0.127mm/年以下 0.127~0.

酸素原子や塩化物イオンは、ステンレスの不動態皮膜に置換しやすく、水に溶けやすい金属塩化物が生成されます。 そして、その部分の膜は水に溶けて無くなってしまいます。 また、水和性塩化物イオンの半径は小さいので、表面皮膜の微細な孔を通過しやすく(皮膜は水に溶けて無くなる)、通過すると錆びてしまいます。

このように、ステンレスは塩化物イオンに対して耐食性がありません。

チタンでスコップを作ってみたら・・・?
泥まみれになっても錆びません。
軽いので疲れません。
地球以外のものにも安心して使えます。

これに対して、チタンの酸化膜は塩化物イオンに対して安定しているため、塩化物溶液中でも非常に高い耐食性を示します。 また、チタンは還元性の酸(塩酸や硫酸など)にも腐食されますが、少量の酸化剤を添加することで安定します。 この場合、酸化剤の濃度には常に注意が必要です。

また、ステンレス鋼には、ステンレス鋼との合金化による腐食や、不動態皮膜の脆弱化による腐食が発生することがあります。

①溶接部周辺の
溶接部周辺では、加熱された場所にクロム炭化物が析出し、その付近のクロム量が不足します。 そのため、クロムによる不動態皮膜が形成されにくくなり、腐食してしまうのです。
一方、チタンは混ぜることで耐食性を付与するのではなく、チタン自体が不動態皮膜を形成する物質なので、溶接しても耐食性が低下することはありません(何か対策を講じる必要はありません。その後、αケースが発生し、溶接部付近の機械的性質が劣化しますが、これは別の話です。)。

② 隙間腐食、孔食、応力腐食割れ ステンレス鋼の表面に塩化物イオンが付着すると、前述のように不動態皮膜が破壊されますが、その部分に応力が加わると、金属組織の劣化に加えて、不動態皮膜が不安定になった部分に応力や腐食が集中します(弱い部分に力が集中します)。 その結果、腐食の形状がカサカサになったり、応力が先端に集中したりして、結晶の流れの中でクラックが進行していきます。

さらに、割れた部分や隙間部分では、そこにある水が交換されにくいため、水中の溶存酸素や水素イオンが新たに供給されにくくなり、その結果、隙間の内外で酸化剤の濃度差が出てきます。 すると、隙間の内外に酸化剤濃度セルが形成され、塩化物イオンが亀裂の外側から移動して高濃度になります。

クラックはどんどん進行し、ひどい場合には破壊に至ることになります。 少し前の話ですが、原子力発電所のステンレス製の溶接管で、耐用年数よりもかなり早く割れてしまう事故がいくつかありました。
チタンの酸化膜は塩化物イオンに対しても安定しているので、常温では隙間腐食、孔食、応力腐食割れに対してもほとんど問題ありません。

③冷間加工による耐食性の低下 冷間加工されたステンレス鋼には腐食が発生しやすいことが認識されていますが、その理由は残念ながら明らかではありません。 何らかの理由で再生できなかった冷間加工による不動態皮膜の破壊に、粒界すべりや粒界へのひずみの集中が影響しているのではないかと考えられており、さらに微細なクラックが発生しているのではないかと考えられています。

チタンは純金属であり、不動態皮膜も強いので、粒界すべりなどは耐食性に影響しませんし、チタンの場合、常温での塩化物イオンに対する耐食性にクラックが影響しないことはすでに知っています。

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